歌うならトマトもつけてよ

トマトはにんにくで炒めてね

レディ・バードはサブウェイオリーブ抜きたまねぎちょい増しの夢を見るか

 

ふしぎの国のバード 7巻 (ハルタコミックス)

ふしぎの国のバード 7巻 (ハルタコミックス)

  • 作者:佐々 大河
  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: コミック
 

 ふしぎの国のバード新刊出てた!!買った!!!

ハルタコミックスは刊行ペースが半年に一回だから忘れた頃に本屋行って新刊見つけると「ラッキー!」ってな気持ちになりますね。

ところでおれはふしぎの国のバードの新刊を買うたびにサブウェイが食べたくなります。ブレッドはシンプルにウィートにして、生地はちょっと焼いてもらって、たまねぎが好きだからオニオン多めをオーダーして、ドレッシングはだいたいわさび醤油。
サブウェイのわさび醤油ってかなり容赦なくツ~ンと鼻にくるんだけどそれが癖になって美味しくてやめられなくて。お腹に余裕があるときはポテトもつけるよ。デブだと!?サンドイッチで野菜摂取してるからいいんだよ!!

そんないつぞやの記憶が口の中にもわ~んとよみがえってきてウウッここは山奥……サブウェイが来い……という気持ちになったりします。というのもおれはふしぎの国のバードの1,2,3巻をサブウェイのテーブルで読んでいて、漫画の内容とそん時食べたターキーブレストの味が結びついてるんですね。オニオン盛りすぎてこぼしたこととか、ドリンクはメロンソーダだったなそういえばとか、ポテトはつけなかったなその時はみたいなことを表紙見るだけで思い出すわけです。

そういう経験はほかにもけっこうある。ワールドトリガーを読むとマックのポテトの味を思い出し、丸くてかわいい使徒みたいなネイバーのシルエットが白髪赤眼のちんくしゃこと空閑遊真のビジュアルとともにもわわわんとよみがえってくるわけで。久米田康二のかくしごとを読むとココスのジャポネギハンバーグの味を思い出します。1巻を読んだのがココスだったから。ちなみに最終巻はガストで読んだ。めちゃくちゃよくて出先なのにふつうに泣いた(家で読めよ)。


サブウェイの話はこんくらいにして……ふしぎの国のバード7巻、主にバードさんとイトの人間関係にだいぶ進展がみられましたね。いいぞ~もっとやってくれ!

 

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

日本奥地紀行 (平凡社ライブラリー)

 

 イザベラ・バードの日本奥地紀行、前々から気になってたんでkindleに入れてあるんだけどいまだに読めてないんだよな。たぶんネタバレとかそういう次元の話にはならなそうだから読んだってよさそうなんだけど、なんとなくもったいない感じがして……。とりあえず今バードさん一行は青森に向かうんだぜ!バリバリヨッシャーだぜ!てとこまで来ているので、そのへんくらいまでは読んでみようかな。
6巻7巻と引き続いて秋田編で、生まれも育ちも東北圏のオイラにとっちゃ「んだんだ……おらんどはぁこういう言葉しゃべってらっけよ……」みたいな素朴な喜びがはんぱないっす。雄物川!六郷!十文字うお~~!
そんなわけで7巻のトピックスとしては大きく二つ!

☆チャールズ・DV彼氏・マリーズ氏とパークス夫妻のブリティッシュ・ネチネチ・バトル

マリーズ氏の挙動はもう4巻の時から思ってたんだけど完全に束縛系DV彼氏のそれです……落ち着いてほしい……
とかなんとか茶化しましたけど今巻でちゃんとバードさんが「イギリスでは鞭や杖で打つことが教育にいいとされてきた」って当時の時代背景について触れてくれてましたね。だから日本人のイトにとってマリーズ氏の「なぜこんなこともできない?」的ビシバシ制裁は恐怖でしかなかったわけだけどマリーズ氏にとってあれはしつけとか指導の範疇なわけです。こえーよ!いくらそういう文化慣習があったからって相手がトラウマになるくらいはたいたりぶったりすんなや!伊藤むっちゃ震えとるやんけ……
イトを横取りされて(正確に言えば先に契約違反をしたのはイトのほうですが)激おこぷんぷんなマリーズ氏は食えないパークス夫妻と前巻に引き続いて水面下でバチバチやりとりをするわけですが、マリーズ氏のプラントハンターとは思われないほどの殺気立った目は一体何がどうしてああなってしまったんですかね……怖いよ。あんなアサシンみたいな目をする人に剪定されるクレマチスの気持ちにもなってみてくれよ。

で、今巻ではまた子を殺された母熊みたいなやべー目のマリーズ氏の過去についても触れられます。子どもの頃に夢みた理想郷である蝦夷地を俺は目指すんだぜ!!って動機の部分が語られることでキャラクターに厚みが出たのはいいとしてだからなんでお前はそんなに伊藤にばっかこだわるんだよ……本編がほんのりした伊藤→バードであらまあ伊藤バードさんはこの旅が終わったら故郷イギリスに帰るのよウフフって感じで微笑ましいのにマリーズ氏が出てきたとたんレーベルが変わって束縛系雇用者攻め×生意気年下使用人受けのBLみたいになるの何でなん……

ふしぎの国のバードのおもしろさは、森薫の影響下にあるっぽい日常の生活を丁寧に描き込む情感あふれる筆致と、好奇心旺盛な女性探検家イザベラ・バードとスーパー通訳・伊藤鶴吉をとりまく人間関係の描写にあると思っているのでまあ面目躍如っていうか、早く彼らが蝦夷地にたどり着いて(主に伊藤をめぐる)ドロドロの人間模様を見せてくれることを願ってますって感じだ。ただ日本奥地紀行を漫画で再描写するだけだとどうしても淡々としてきちゃうから、伊藤をめぐるバードさんとマリーズ氏の対立構造を強調することは漫画のつくりかたとして一種正しい選択だと思う。ドラマが描けるからね。

どうでもいいんだけどイト見てるとど~~~してもギャグマンガ日和の河合曽良が思い出されてしゃーない。クール系毒舌従者ね。そんでこっちの伊藤は甘いもの好きとかギャップ萌え要素もぶち込んでくるから属性多いよ。しかも片思いだし……ハヒ……。

☆バードさん&イト、お互いに隠し事はもうしないの約束をするの巻


どっちかっていうと今巻のメインはこっちだよ。やんごとなき事情でバードさんの通訳になったイトはとにかくバードさんに対して隠し事が多いのですが、そんなイトが7巻にしてようやく!「お互いにもう隠し事はやめましょう」なる宣言をするのだった!!ヤッターーー!!!やっとか!!!!どっちかっていうと「やめましょう」じゃなくて「やめます」だろ伊藤秘密の質と分量的に……まあいいや。伊藤はバードさんに持病のことを秘密にされていたことが相当ショックだったようだ。もともとバードさん&イトの二人はマリーズ氏&伊藤のそれとは違ってわりと対等な男女バディの感がありましたが、これでますますお互いを一人の尊敬すべき他者として認め合っていけるようになるといいですね。蝦夷地では元カレ(雇用主)が目をサンカクにして待ち受けているような予感がするけれど……がんばれ。この二組の主従はマリーズ氏の登場以降ずっと対比関係にありますね。

う~~ん続刊はまた半年先か……気の長い話だな~~。
でもまあおおきく振りかぶってとかヴィンランドサガもだいたいこんな刊行ペースだし、ヒストリエに比べたら確実に年一巻はカウントが進むだけマシか。ギリシア世界にアレクサンドロス王が爆誕するのはいつになるですか?
生きてる間にちゃんと完結するのかどうか謎タイトル三つ並べたら頭痛がしてきた……。

ついでに最近読んだ新刊の感想をチャカパッと。

 

 あいっかわらずグルーヴ感とキャラクター造形と作画周りに全振りの漫画だな……。
一体何がどうなったのか一周だけじゃよくわからなくて二周してしまったよ。そうそうそういえばそんな話でしたね。マーカス・ロウが思ってたより食えない感じのキャラで良い感じだ。交渉事は兄ちゃんロウより適正上まであるかも。目がいいだけに見なくてもいいものまで視界に入ってきてしまうレオナルド・ウォッチが、でもその猥雑さや哀しみから文字通り目をそらさず彼なりに受け止めようとするのが主人公って感じで好きなんだあー。私のトータス・ナイトは今日ものろくて優しいぜ。

 

Dr.STONE 17 (ジャンプコミックスDIGITAL)

Dr.STONE 17 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 

 今回もマージで面白かったすね。この世の七割くらいの少年漫画はドクターストーンのテンポ感を見習ってほしい。バー・フランソワのカクテル、これドクターストーンカフェの企画が立ち上がったら完全再現の流れだ!!!と思ってワクワクしました。店員さんもみんなフランソワっぽい格好して厨房にいて、んでお客さんであるところのおれらは龍水がごとくに指パッチーン!!!!してフランソワ!!!!!準備はできてございます……ってしたいよね。いやそんなめんどい仕込みはしなくてもいいわ、どっちかっていうとおれも司ちゃんカクテルに紫外線当てて色変えてこっこれが科学の光か……ってしてみたいっすね。
ちなみにおれにドクターストーンをすすめてくれた友人に「カフェやるなら行きたいねえ」って話をしたら「行きたいしブラインドアクキー集めたいけどなぜか氷月ばっかり集まって微妙な気持ちになりたい」と細部が妙に丁寧な妄想LINEが返ってきて笑ってしまったよ。おれはすいかちゃんのアクキーがほしいです。


今回はこんな感じー!おつかれさまでした。

舞城んちのジョージ・ジョースターおぼえがき①

 

JORGE JOESTAR (JUMP j BOOKS)

JORGE JOESTAR (JUMP j BOOKS)

 

 電子書籍版を読みカーッ!となってハードカバー版と新書版両方紙で買っちまったよ。鈍器だよ。新書版の帯が(バカバカし)いい出来なので見てほしい。

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なんだよ究極大戦て小学生かよ!かわいい。

 

いろいろあって今年の3月ごろメンタルが死んでおり、職場にも行けず外にも出られず何をしていたかと言えばジョジョのアニメをぶっ通しで観ていたのだけど、一部二部が記憶以上に面白くってハマってしまったのだ。
ジョナサンとディオはまるで神話の登場人物のようだ……。
神風動画謹製の二部オープニングどちゃクソかっこいいぞ。
そんな感じで、3月末~4月にかけてジョジョ熱がめちゃ高かったのだ。
で、そのほかほかのジョジョ熱そのままに関連書籍を読みあさりまくっており、上遠野浩平さんの『恥知らずのパープルヘイズ』の次に舞城王太郎の『JORGE JOESTER』を手に取ったのであった。

 恥パ、7年だか8年だかぶりに読んだけど、ま~端正なスピンオフでふつう「ノベライズ」っつったらこういうものを想像するよなあという感じ。フーゴがパープル・ヘイズの顔をじっと見て『なんとなく寂しそうな目をしてたんだな』とごちるシーンがとてもいい。やべずれた。閑話休題

 

で、「舞ジョジョ興味ある」って思ってGWそこそこ時間あるし読むべえと思ってkindleに落としたらこれが大変な時間泥棒で、文字通り寝食を忘れて読みふけり2日で読破してしまうという暴挙。暴挙ではないか。『JORGE JOESTER』のことだけ考えて過ごした2日間マジで貴重だったし自分の中にビシャン!と雷落ちた。すげーよすげーよ!

そもそもおれは今までの人生の中で小説ってあんまり読んでこなかったのだ。

いちおう文系の学科出て論文書いてってしたから必要な本はてけとーに読んできたしバカだから漫画は死ぬほど読んできたんだけどバカだから文字みっしりの長編小説ってダルいなって感じでほんとに全然読んでこなかったのだ。すごいよね。だから舞城王太郎の小説読むのもこれが初めてだった。

よくわからなかったのだ。は?って思った。

舞城王太郎とかいう化物みたいな作家に振り回される時間は気持ちがよくて、よくわかんなかったんだけどよくわかんなかったなりに楽しんじゃったりなんかして、気がついたらkindleの下のほうに「99%」とか表示出てきてウワッもう終わっちゃうのかこの物語、いや多分三割くらいしかわかってない気がするんだけどそれでもこの物語が終わってしまうのは結構寂しいぞ!ああ~~終わった……読んだ……。よくわかんなかったけど……。そんな感じだ。

で、読み終わったはいいものの宇宙三十六巡とか平行世界とかそもそも九十九十九(きゅうじゅうきゅうじゅうくじゃなくてツクモジューク)って誰やねん名探偵⁉なんでジョジョに名探偵⁉ってとこからつまづいてたのでみんなこの本どうやって読んでんだろ……と戦々兢々としながら読書メーター見に行ったらみんなもだいたい混乱しててウケた。だよね。Amazonレビューの賛否両論っぷりがマジでウケるので見てみると面白いよ。レビュー含めて本編感がある。

 

んで、なんだかんだあれこれしているうちにGWなんかあっという間に過ぎ去って、仕事したり飯食ったりぶらぶらして日常を過ごすんだけど、ふとした瞬間に舞城んちのジョージ・ジョースターのことが頭をよぎって……仕事に集中しろ……でもよぎって……考え込んでしまうのだった。読むの疲れるけどもっかい読んでみたいな、でもせめて舞城王太郎の他の著作をなんぼか読んでから再チャレンジしたいな……で、読んだよ。

ディスコ探偵水曜日(上)(新潮文庫)
 

 ふざけんな舞城王太郎、ページ数多すぎなんだよ。小説読むの慣れてないっつってんだろ。まあ読むけど。「舞城王太郎の最高傑作」的なレビューをいくつか見かけたので最高傑作ってんならこれを読みきればこの作者のことちょっとはわかるだろって軽い気持ちで読み始めたらひどい目にあった。長い。

長いのはまあ読みごたえがあるってことだからいいとして、こっちもかなりよくわかんなかったぞ。

でもなんか最後のほうはちゃんと美しかったのだ。終始煙に巻かれどおしでムキー!よくもアタクシのこと翻弄してくれたわね!って感じなんだけど、ふとした瞬間に挿入されるつぶやきじみた本音の一文がまぶしくて美しくて、ああこの人は基本的に人間のことを信頼してるんだな……でもその信頼を素直に書くんじゃ照れ臭いから、あえてめちゃ壮大な遠回りをしてみたり理屈をこねてみたりするんじゃないか……いやこの読みが正しいのかどうか全然わかんないんだけど、なるほどな、って思ったのだった。

ディスコ探偵水曜日(下)(新潮文庫)
 

 みんなはディスコ探偵水曜日のどのへんが好きですか?おれは水星C!

 

で、長いよおとか人多いよおとかおまえ死んでなかったんかい!とかぶちぶち文句言いながらも『運命と意思の相互作用』とか、『気持ちが形になる』とか、『文脈を作れ』とか『意思の力で時空すら超越する』とか、おっおっこれって舞城んちのJORGE JOESTERの読解に使えそうだぞ!これも!これも!これも!と砂場の中の光るガラス片を集めるみたいな気持ちで文字を追っていったらいつの間にか読み終わってたわ。
ディスコ探偵もちゃーんと落ち着いてもう一回読み直したいんだよね。今ならきっともっと楽しめるぞ。そんときはまたこのブログにべべべっと書き留めるとして。 

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)
 

 これとか、

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

 

 これとか(初出では『煙か土か食い物か』ってタイトルだったところを『煙か土か食い物』に改めたってどっかで読んだけど、最高かよとなった。「か」は払うほうがよっぽどいい)、

九十九十九 (講談社文庫)

九十九十九 (講談社文庫)

 

 これとか(これが一番マジふざけんなよってなった)読み終わって、ちょっと遠回りすんのも疲れてきたな……ってところで引き返してイドインヴェイデッドを挟んだりしてたわけです。清流院流水はちょっと手つけらんなかった。また今度ね。

 これがまたかなりめちゃ良くって……あれっおれってもしかして舞城のファンみたいな?いやいや待て待て待ておれはあくまでJORGE JOESTERの解像度を上げるためにだな……。イドインヴェイデッドは音響がよすぎてキモいくらいで(キモい言うな)、特に鳴瓢秋人役の津田健次郎さんのお芝居が耳にも胸にも心地よいです。自殺教唆シーンとかあれしびれるよね。おれがアラブの石油王だったら迷わずBlu-rayBOXを買えるのに。舞城のスピンオフ読みてえよお。

閑話休題


で!!7月あたまくらいから暇を見つけてはkindle開いてJORGE JOESTER読み返して、こないだようやく最後まで読み終わったところでこの記事を書いているのだ!脱線凄かったが戻ってきたぞ!読んだ!!おれは読みきったのだ!!!

むちゃくちゃ面白いじゃねえかふざけんな!!!!!おれは自分にキレている……

読んでいるようで読んでなかったところがけっこうあった、というかおれは基本キャラで物語を追う癖があるので具体的に言えば一周目はカーズのとこばっかり読んでた。舞ジョのカーズ、胸が苦しくなるくらい良い……このカーズは考えるのをやめなかったカーズだ。カーズの台詞いちいちめちゃくちゃ良いんだよ。人間の想像力を尊び、考えることをやめない名探偵の知性による創造をフフッと笑って面白がってくれる……
カーズについて書き出すと際限がなくなってくるので一旦中断だけど、「ジョジョの奇妙な冒険」というタイトルにふさわしい奇妙な冒険っぷり。スターダストクルセイダースもニッコリの世界と時空をまたにかけた大スペクタクル(火星もあるよ)。

イギリスのジョージ・ジョースターsideは“ドジで不器用でウジウジした性格で考えもそれほど深くない”若きジョージ少年の王道青春物語で、↑の舞城作品を読んできた今となってはびっくりするくらい素直にするする読める。こっちはわりかしちゃんと「荒木ジョジョの」ノベライズやってる。九十九十九とかいるけど。
そんで色々グダグダだけど人好きのするジョージ少年を守護するこれまた若きリサリサがぶっ飛んでキュートなのだ……。このリサリサは田中敦子の声で喋らなそう。おれはちょろ山ちょろ蔵なのでジョージを守るために震えをこらえながら屍生人に立ち向かう一章のリサリサ見てもう一発で彼女のことが好きになってしまったのだ。おれの心の中のツェペリさんが『「勇気」とは「恐怖」を我が物とすることじゃあッ!』って叫んでるよ……。
ちょっとむずがゆいジョージとリサリサの恋愛模様を織り交ぜながらおおむね原作沿いに進んでいくイギリスのジョージsideは原作ファンにもやさしいつくりになっていると思う。

で、たぶんこっちがよく否定派に取りざたされてるんだと思う西暁ジョージ・ジョースターside。め、め、め、名探偵ですか?福井県西暁町?完全にアウェーであるにも関わらず己の作家性を惜しげもなく開陳していくスタイル、スガスガしくて良い!っていうかおれは舞城王太郎のそういうとこがおもしろくて好きだなあって思うんだけど、「無理です」となる人の気持ちもわかるわかる。荒木飛呂彦の描くジョジョっぽいジョジョ読みたいよねふつうは。恥パの上遠野さんはかなり荒木ジョジョに寄せてた感があった。一つの敬意の示し方として、それはそれでいいと思うんだ。
じゃあ舞城の作家性丸出しなJORGE JOESTERは原作へのリスペクトがないのかっつったらそんなことはないとおれは思うし、それは献辞の『荒木飛呂彦先生へ。』って一文にも表れてると思う。舞ジョは原作の要素をもちゃこちゃに再構成して「舞城王太郎の」作品として提出された「ジョジョ」であり、親愛なる作家先生に向けた命知らずのラブレターだよ。原作どんだけ読みこみゃこんなことになるんだよ。作家て怖……いや凄い。

いくら企画ありきのノベライズだからって、作家であるからには己の存在を懸けて作品に対峙しなくちゃなんない。それには人の言葉を借りてるだけじゃダメで、むしろ大元の原作を喰らい尽くすぐらいの気概で臨まなきゃ。その意味で、おれは舞城王太郎って作家の原作への対峙のしかたに共感を覚える。作家らしい作家だなあって思う。偉大なる原作に気後れせず、やりたいことをやる。でも踏まえるべきところはちゃんと踏まえる。すげー大事じゃんそれ!世のノベライズなるものがみんなそんなふうだったらおれは嬉々としてkindleに落としまくってるはずだけど、今のところは「原作に寄せた」作品が大半なのがちょっと残念なんだな。おれは新しい解釈がみたいよ。「同じ作品読んでたはずなのになんでそんな発想が出てくるんだ⁉」ってなりたいし、おれはJORGE JOESTER読んでていろいろ打ちのめされたよ。空が青いぜ……。

多分世の中的にはどっちもあったほうがよくて、どっちもあるからこそたまに出てくる作家性ストレートパンチみたいな作品がバチン!と効いてくるんだと思う。

「他人の風呂敷を使ってどう自分の作品を書くか」っていうのはJORGE JOESTERに通底する裏テーマでもあって、そのことは《ビヨンド》という言葉を用いて作品中で何度も言及される。ビヨンドっちゅうのは作品世界にたいする作者のことをさす言葉で、下に引用する九十九十九の台詞なんかがわかりやすい。

「僕は、僕が《シャーロック・ホームズ》で、僕のこの世界の外側に、《アーサー・コナン・ドイル》のような存在がいるのだ、と確信してるんだ。僕が名探偵であると自認しているのと同じくらい強く、はっきりとね。そしてその存在を、僕は《世界を超越した場所で僕を操るもの》、『ビヨンド(BEYOND)』と呼んでいる」

――九十九十九、『JORGE JOESTER』ONE 九十九十九

 メタいのう。で、メタを認識せよってだけにとどまらず、物語の主人公たるジョージ・ジョースターに対して九十九十九はこんなことを言う。

「君は、自分の『ビヨンド』を信じ、自分の運命を乗り越えていかなければならない」

――九十九十九、『JOEGE JOESTER』ONE 九十九十九

信じて乗り越えなければならないっていうのは裏を返せば「運命を乗り越えよう、そのためにどうかオレのことを信じてくれ」ってことでもある。

「その《神》もまだ迷っているかもしれん。が、とにかくもし生き続けたければ、その《神》に従う他ないな」

 ――トンペティ、『JORGE JOESTER』THIRTEEN 敵

んなこと台詞に書くな!って感じだが、マジなのかお茶目なのか舞城王太郎は平気でこういう台詞を放り込んでくる。原作のジョージ・ジョースターはディオの生み出した屍生人の手にかかり若くして死の運命に殉ずることになってしまうのだけど、どっこいここは舞城の書くジョジョの世界、登場人物が《ビヨンド》たる作者を信じ、考え、文脈を生み出すべく行動することで死の運命は克服可能なものとなるのだ。そしてそのために舞城王太郎九十九十九を通じて何度でも二人のジョージに語りかける。自分の《ビヨンド》を信じ、自分の運命を乗り越えていくのだ!

信じろ!

この一見自己言及的なメタいやりとり、一周まわってムチャクチャ誠実じゃないですか?作者と登場人物は互いに影響しあうことで物語そのものをも動かしうる等価の存在であり、けして作者が一方的に登場人物を操るばかりではない……そんな文脈を読み込もうとするのは無理筋かしらん。究極的には夢物語に過ぎないのかもしれないけど、でもそういうのって態度を示すことこそが重要なわけで。作者の自意識とかいいからジョジョを書けジョジョをって指摘はせやねんなって感じなんだけど、舞城王太郎ジョジョと全力で闘ってるなあって思うしおれはそれがとてもうれしい……。マジメに苦しんでるクリエイターの姿は我々に勇気をくれるのだ。つくることは苦しみなんだぞって。


「他人の風呂敷を使ってどう自分の作品を書くか」っていう作家としての命題に、メタ的な自己問答でもってひとつの解をぶち立てた舞城王太郎先生に力一杯の拍手を送りたい!!!おれはスゲーおもしろく読んだ!!!!みんなも『JORGE JOESTER』読んでわー凄いやって感じになってくれ!!!!!

 

 なんか噂によるとこの本を読めば舞城王太郎の創作スタンスに関する解像度が上がるって聞いたのでポチってみた。読んでまたこの記事加筆するかも。
あれおれ今年に入ってからの舞城王太郎課金やばくね……?

2020.9.2読んだ。ヤバいな!?!?メッチャ面白かったわ!!!
舞城王太郎の腹からはたぶん金閣寺が出てくるし、城字・ジョースターの腹からは究極生命体が出てくるわ。ありそうでない感。らしくなさが逆にらしいっていうか何ていうか……意外性?あと『私たちは素晴らしい愛の愛の愛の愛の愛の愛の愛の中にいる。』でギャーになった……「作家」の存在を意識して「登場人物」として振る舞うあれそれに「ビヨンドと特異点」の構図の原点を見るみたいな……買ってよかった。

 

こんな感じの締め方だけどまだまだつづくよ。次はイギリスのジョージ・ジョースターの冒険をねちねち追っかけていく感じでいってみよーお

読んだ本の感想などをついったーにぼんぼん放っていたのだけど

さすがにちょっと貼りつきすぎかなっていうかタイムライン埋めすぎかなって気がしたので、140字じゃちょっと収まらないかなこのおれの詩情はってときはこっちのブログになんやかやだうだうと書きつけていけたらいい。

 

だいたい10年くらい前、とある雑誌の投稿仲間向けにFC2ブログをやっていた。
10年前のおれは今より相当ひまだったのかそこそこのペースでそこそこの分量の記事をあげていて、内輪のコミュニティ向けに書いたものだから拍手もいい感じに毎回ついて、それなりに楽しいブロガー生活を送っていた。
なんでやめたちゃったのか今となっては原因をよく思い出せないんだけど、東日本大震災を期に情報収集目的でTwitterをはじめて、ホラTwitterってラクだし反応がブログよりダイレクトだしで、なんかたぶんそんな理由でブログの更新がおっくうになっていったんだと思う。
それとだいたい時期を同じくしてpixivに登録した。
pixivってすげーのね、自分の見たいタイトルのファンフィクションがぺぺぺっと単語入力するだけでドゥワァ表示されて、わーもうウェブリングサーチ検索ようせんわ、これからはpixiv一強の時代やって思ってたら本当にだいたいそんな感じになって、便利なんだけど今はちょっとさびしい。
はてブを開設したのもたぶんそんな理由からだ。
別にそんな早くなくていいし、ダイレクトでなくていいし、単語検索ペペペッで大量のファンフィクションが引っかからなくてもいい。
人の言うこと人の作るものだけで満足するのはもうそろそろいいかなあ。
だって10年経ったんだもの。

Twitterのヤバいとこは、鍵閉めないで感想とか妄想とかひょいぽい投げてるだけでちょっとずつフォロワーが増えていって、いつの間にか何らかのファンダムに所属させられていることになるってとこ。なんだこの被害者意識あふれる書きぶりは?でも実感としてそう。おれはAというキャラを(作品を)愛好するファンダムの一員としてみなされている。おれはそれがちょっと息苦しい。
クラスタとか◯×者とか界隈とか、何何!?いつおれがその集団に所属すると宣言した!?どういう契約が交わされておれはその集団に所属することになったんだ!?いやなんもしてねえ……しいていえば特定のキャラのイラストをアイコンにしたくらいだ。
ひょっとしてそのことがTwitter内ファンダムにおいては自分の所属を主張する行為としてみなされるのか?わからねえ……難しい……。
特定のファンダムに所属しちゃうと作品の悪口とか言いづらくなっちゃうからしたくないんだけど、Twitterで発言し続ける限りそれは難しそうだ。
ほんとはファンダムに所属してようがしてまいが思ったこと言えなんだけど、そういうとこおれは弱いのだ。
気にしてないってそぶりを徹底しないと言いたいことも言えないのだ。
マジしょーもねーよ!ちょうちょになりたい。


その点、ブログいいんじゃないかな。見ない人は見ないし。
自分の城的なこの場所でちゃんとものを言う練習をしよう。
するぞー!よーし!
とりあえず最近二周目を読み終わったジョージジョースターの感想を書こう。
ジョージジョースターめっちゃおもしろかったのに、Amazonのレビュー見るとくそくそ辛辣なダメ出しコメント並んでて笑ってしまう。
イイネ!とワルイネ!が拮抗するってことはいいことだ。
おれはもっぱらイイネ!よりの感想を書こうと思うけど、「ここどうなん?」ってとこも忘れずに書きつけていこうと思うだァーーッ